ところでさ、いきなり話が変わってアレなんだけど。
俺ら今、信州の山奥にいるんだよね。
しかもさ、殺人予告されちゃって。
いやー、まいったよね。
第百魔王なんて、クソの役にも立たないじゃん。
達成種だかなんだか知らねえけど、女一人説得できねえって、アホじゃねえかってぇーの。
つか、よくよく考えたら、あの女の言うとおり、俺が死ねば人類はこのままなんだよな。
よその連中に触れ回ったら、どうすんだよ。
俺、大勢の人間にボコボコにされちゃうじゃん。
あー、さて、ぼちぼち順番どおり話すとするか。
背筋が寒いんだが、遺言だと思って聞いてくれ。
いやー、もうシャレにならないって。
あの女、ついさっきも鎌を片手に、俺を追い出そうとしたんだぜ。
そもそもは、ヘソの脇のウロコを見つけて、何日後だったかなあ。
俺の目の前に、突如として見慣れない男が現れたのよ。
目の前と言っても、街中やそのへんの公園じゃないぜ。俺の部屋の中よ。
ったく、気味が悪いよな。夜中に目が覚めたら男がぽつんと立っているなんて。俺の人格が誤解されるじゃねえかってぇーの。
で、その時のこっちの狼狽ぶりは省略するけれど、それが第百魔王との出会いってわけ。
何度でも繰り返すが、なんで俺なんだよ。地球には何十億の人間がいるってぇーのによ。
「というわけで、充と言ったか。森羅万象、古今東西、この世の生命体にはある宿命に縛られているわけだ。達成種と未達成種、この両者に分かれるのもその一つなのだが、この星の住民はようやく達成種に近づいてきた。ま、わたしの種族に比べれば大幅に遅れているが、なんにせよ鍵はおまえが握っている。しばらく、ここへ居候させてもらうぞ。万が一、おまえに何かがあると我々も少々困ったことになるのでな」
寝ぼけ眼の俺に向かって、男はべらべらと一方的に喋りまくりやがった。
こっちは話についていけねえし、ふと人の気配がして起きたら枕元に妙なのが立っているし。
つか、というわけでって、なんだよ。
俺が鍵握っているのなら、口に気をつけろってぇーの。
「あん? いわゆる幻覚か、これ。やっぱ、ノイローゼなのか、俺。来るところまで、来ちまったなあ。で、あんた、ヒャイハーク、なんだっけ? さっき確か名前言っていたよな」
「ライリャーク・マハーだ。ここから60万光年ほど離れた星から邪魔させてもらった。もっとも、わたしが母星にいることはほとんどないが。一つ付け加えておけば、達成種転換への導きをするのは今回で3回目だ。新米ではないし、悪いようにはしない。安心したまえ」
「ライ……? 何人だ、あんた。日本語話しているし、アジア人みてぇーけど」
「ライリャーク・マハー。確かにわたしの外見は、アジアの人種に似ているな。我々の祖先も、ゴールド種だったと言うし。まあ、おもしろい偶然だ」
で、名前が発音しづらいだのなんだの、脇道にそれたキャッチボールを繰り広げた末、俺は男を第百魔王と呼ぶことにした。
ライリャーク・マハーと、第百魔王。なんとなく近いだろう?
なにより、このチープ感がいいよな。
話の内容も意味不明だし、まともな名前で呼ぶなんてもったいねえ。
名前っていうのは、もっと尊いものなんだ。
少なくとも、幻覚の登場人物には出来すぎなくらいだわ。
ま、その点は俺の勘違いだったんだけどな。
だって、第百魔王の野郎、その後ずっと俺んちにいたわけだし。
いくらなんでも、幻覚にしちゃ長すぎだわ。
さて、俺の話はまだ続くし、これだけじゃ何がなんだか分からないだろう?
けど、どうも気分が落ち着かなくてねえ。
俺、ぶっ殺されちゃうのかなあ。
火葬されて、骨まで金色だったら笑っちゃうよな。
いや、本当。
あの女、またここへ来るのかなあ。
さっさと別の場所へ移ろうぜ、魔王ちゃん。
(V)o¥o(V) つづく?
俺ら今、信州の山奥にいるんだよね。
しかもさ、殺人予告されちゃって。
いやー、まいったよね。
第百魔王なんて、クソの役にも立たないじゃん。
達成種だかなんだか知らねえけど、女一人説得できねえって、アホじゃねえかってぇーの。
つか、よくよく考えたら、あの女の言うとおり、俺が死ねば人類はこのままなんだよな。
よその連中に触れ回ったら、どうすんだよ。
俺、大勢の人間にボコボコにされちゃうじゃん。
あー、さて、ぼちぼち順番どおり話すとするか。
背筋が寒いんだが、遺言だと思って聞いてくれ。
いやー、もうシャレにならないって。
あの女、ついさっきも鎌を片手に、俺を追い出そうとしたんだぜ。
そもそもは、ヘソの脇のウロコを見つけて、何日後だったかなあ。
俺の目の前に、突如として見慣れない男が現れたのよ。
目の前と言っても、街中やそのへんの公園じゃないぜ。俺の部屋の中よ。
ったく、気味が悪いよな。夜中に目が覚めたら男がぽつんと立っているなんて。俺の人格が誤解されるじゃねえかってぇーの。
で、その時のこっちの狼狽ぶりは省略するけれど、それが第百魔王との出会いってわけ。
何度でも繰り返すが、なんで俺なんだよ。地球には何十億の人間がいるってぇーのによ。
「というわけで、充と言ったか。森羅万象、古今東西、この世の生命体にはある宿命に縛られているわけだ。達成種と未達成種、この両者に分かれるのもその一つなのだが、この星の住民はようやく達成種に近づいてきた。ま、わたしの種族に比べれば大幅に遅れているが、なんにせよ鍵はおまえが握っている。しばらく、ここへ居候させてもらうぞ。万が一、おまえに何かがあると我々も少々困ったことになるのでな」
寝ぼけ眼の俺に向かって、男はべらべらと一方的に喋りまくりやがった。
こっちは話についていけねえし、ふと人の気配がして起きたら枕元に妙なのが立っているし。
つか、というわけでって、なんだよ。
俺が鍵握っているのなら、口に気をつけろってぇーの。
「あん? いわゆる幻覚か、これ。やっぱ、ノイローゼなのか、俺。来るところまで、来ちまったなあ。で、あんた、ヒャイハーク、なんだっけ? さっき確か名前言っていたよな」
「ライリャーク・マハーだ。ここから60万光年ほど離れた星から邪魔させてもらった。もっとも、わたしが母星にいることはほとんどないが。一つ付け加えておけば、達成種転換への導きをするのは今回で3回目だ。新米ではないし、悪いようにはしない。安心したまえ」
「ライ……? 何人だ、あんた。日本語話しているし、アジア人みてぇーけど」
「ライリャーク・マハー。確かにわたしの外見は、アジアの人種に似ているな。我々の祖先も、ゴールド種だったと言うし。まあ、おもしろい偶然だ」
で、名前が発音しづらいだのなんだの、脇道にそれたキャッチボールを繰り広げた末、俺は男を第百魔王と呼ぶことにした。
ライリャーク・マハーと、第百魔王。なんとなく近いだろう?
なにより、このチープ感がいいよな。
話の内容も意味不明だし、まともな名前で呼ぶなんてもったいねえ。
名前っていうのは、もっと尊いものなんだ。
少なくとも、幻覚の登場人物には出来すぎなくらいだわ。
ま、その点は俺の勘違いだったんだけどな。
だって、第百魔王の野郎、その後ずっと俺んちにいたわけだし。
いくらなんでも、幻覚にしちゃ長すぎだわ。
さて、俺の話はまだ続くし、これだけじゃ何がなんだか分からないだろう?
けど、どうも気分が落ち着かなくてねえ。
俺、ぶっ殺されちゃうのかなあ。
火葬されて、骨まで金色だったら笑っちゃうよな。
いや、本当。
あの女、またここへ来るのかなあ。
さっさと別の場所へ移ろうぜ、魔王ちゃん。
(V)o¥o(V) つづく?